トラウマワーク(ソマティックエクスペリエンス)


『トラウマとは、神経系に閉じ込められた未解放のエネルギーである。過去の出来事そのものにあるのではない。』

 

ーピーター・リヴァインー

 

 

神経系を巡る未解放のエネルギーを解放することができれば、それに紐付いた生理現象、感情や思考、つまりトラウマは解放することができる。

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トラウマとは、個々の出来事の記憶などにあるのではなく、そのとき神経系に起こった活性化を適切に解放できず、そのエネルギーが今でも身体の中(神経系)を駆け巡っている、そのことにある。つまり、その神経系を巡る未解放のエネルギーを解放することができれば、それに紐付いた生理現象、感情や思考、つまりトラウマは解放することができる。

※その解放は、一気にやると逆に神経系を圧倒し、再びそのエネルギーを凍りつかせてしまう。再トラウマ化です。そうではなく、身体が解放し「統合」する時間をもてるように、大丈夫な状態にベースが移っていくように、ゆっくりと、安全に行われることがキーです。

 


ソマティックエクスペリエンス(SE)

 

ソマティック・エクスペリエンス(SE)とは

 

  • 神経系を健康な状態へ回復していくためのトラウマワーク

トラウマといっても心の問題に焦点を合わせるのではなく、人の神経系を扱い「身体感覚」に焦点を当てます。神経系の活動を健康な状態に回復していくワークです。

 

  • このワークの創始者はロルファー(ロルフィングの施術者)でもありました

ピーター・リヴァイン博士です。

 

  • 未完了のエネルギー(トラウマ)

- 動物には生存ために脅威と出会ったとき次の3つの戦略をとります。

「逃げる、戦う、凍り付く(死んだ振り)」

この3つに優劣はありません。すべて生存のために同等に必要な行為です。

- この3つの状態にあるときの神経系は活性化し、高いエネルギー状態となっています。戦い、逃げるときだけでなく、凍り付いているときにも高いエネルギーを使い続けているのです。

- このうち、「逃げる、戦う」戦略を取ったとき、その行為が終わるときには身体はエネルギーを使い切り神経系は落ち着きを取り戻します。しかし、「凍り付く」戦略を取ったとき、その状態から戻ってくるときにもエネルギーを使い切りる必要があります。野生動物を観察するとこのとき身震いするなどしてエネルギーの解放を行うのですが、人の場合それをやり損ねてしまうことがあります。このとき、高いエネルギー状態は維持され続け神経系の中を回り続けるのです。

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人間は大脳が発達しているため理性によって、この自然なプロセスを止めてしまうことが多々あります。

この場で泣いたり、震えたりするのは恥ずかしい、あるいはそれを行っている人を親切心や文化的基準から邪魔してしまう、階段から転げ落ちた人を(本人が状況確認ができて震えが起こりエネルギーを解放する前に)すぐに助け起こしてしまう、など

 

  • トラウマのある人とは

トラウマのない人などいません。その程度に差があります。

トラウマのきっかけとしてはあらゆることがあり得ます。落下、麻酔、手術、誕生の仕方(吸引、帝王切開など)などなど。

すべての有機体は拡張と収縮を繰り返し安定を保ちます。拡張のみだったり、ずっと一定だったりすることはありえません。トラウマを受けた人の神経系は刺激に対する安定した活性化、非活性化がうまくいっていません。

*神経系の活性の状態と、自身の考え方や心の状態も連動しているようでした。

 

  • タイトレーション(少しずつ)

神経系の働きを安定した正常な状態にシフトしていきます。

このシフトには時間がかかります。ゆっくり、ゆっくり。少しずつ。身体(神経系)は変化していきます。急激な変化には反動があります。

*はっきりいつ大丈夫になったという境目があるものではなく、気がつけば以前と比較すると確実に大丈夫になってきている。。というような感じでした。

 


  • わたしの2年半に及ぶSE体験

わたしは、SEを継続的に2年半ほど受けていたことがあります。そのときは、まだ日本に二人しかプラクティショナーがいない時代でした。たしか、2010年の終わりから。 

 

その頃は、働いてはいるが、人との会話、コミュニケーションがまったくできない状態でした。電話でも受けようなら汗ダラダラ、震えてくる。会話しようとおもっても喉が締め付けられ、言葉が出てこない。目が痛い。誰かに会おうとすると、着くまでに吐くし、鼻血出てくるし。もう、身体がそうなのだ、どうしようもない。(このときは、そんなことはわからず、自分のせいだと思っていました。周りからいろいろ言われてきたこと、それは、普通の人にはわからない身体の制限でした。)

 

不自由なのは、あなたのせいではない。身体がそうなのだ、今は。それは変わり得る、必ず。なぜなら、生きているから。人にはその回復の力が流れています。それを表現できるようにすること、それがボディワーカーやカウンセラーの仕事です。

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SEを受け始めるきっかけは、2010年12月にブラジルに行ったことでした。そこで、ロルフィングの最終トレーニング、ユニット3の講習があったのです。地球の裏側、そこを選択するか非常に迷いましたが。。

そこで、わたしはロルフィングの資格を得ることができませんでした。条件付きの合格。条件を日本でクリアすることで、認定証をもらえることに。

理由は、人とのコミュニケーションが難しいこと。クライアントさまと実際の施術でやりとりすることができない、そのことを解決する必要がある、私はトラウマを大きく抱えておりそれを解決してからだ、そういう指摘でした。その講師は心理セラピストでもあり、SEのプラクティショナーでもありました。(ロルフィングのコミュニティでは心理の大家です。)そこで、トラウマワークであるSEを勧められたのです。


結局、それから、認定の条件をクリアするまでに3年半かかりました。


まず、SEのセッションを受け始め、2年ほどで外の世界になんとか出ることができるようになりました。それまでは、ひとり。海外でトレーニングを受けましたので、ロルファーのクラスメイトはおらず。日本では孤立した存在でした。そして、仕事以外では部屋に閉じこもり、身動きできない状態でしたので人とのやり取りはほとんどゼロでした。それまでの友人たちもゼロになった。そのころの自分の描写は、自分を円の中心に世界のあらゆるひとは等距離にいる、どの方向に手をのばしてもとどかない世界。SEのセッションルームだけが本当の世界、プラクティショナーの方だけが本当の人、しかし、それは仮の世界、仮の人、仮の関係性。嘘の世界。

SEのセッションを受け始め、2年が経つ時、どうしてもそのセッションルームの世界から外に出て行きたくなりました。そう思えるようになった、それは、SEを受けることにより、少しずつ少しずつ、神経系、身体が変容していったからだと思います。身体とこころはつながっていると思います。

SEの変化は、ゆっくりです。変化は気づかないところで少しずつ少しずつ起こって行きます。とくに、外界からの刺激に対して耐性のない段階では、この少しずつというタイトレーションが大切です。じれったいほど変化はおそい。しかし、それが最速なのです。わかりやすい、その場での大きな変化は、解決には繋がりません。むしろ、時間の経過と共にトラウマを増幅させることがあります。


変化していることに、その場では気づかない。が、振り返ってみると以前と全然違う。それが本当の本質的な変化なのでしょう。


外界にでられるように、少しずつ、なってきました。吐きながら、鼻血出しながらですが。。そして、やっとボディワークのワークショップに参加できるようになってきました。やっぱり、吐いたり鼻血出したり、ぼーっと乖離したり、フリーズしたりしながら。。この頃もSEは受けていましたが、頻度はずっと減って行きました。

(そういえば、2年半の間に3ヶ月ほど受けるのをやめた時期が2回ほどありました。いやになったことがありました。けど、それしか手がかりがなかったので、また受け始め、外界に出られるところまでやってきました。)

ここからが、ボディワークによる変化の始まりです。神経系に限定されていた変化から、身体の全体の変化、身体の内側にある、癒しの力の発揮による変化の始まりです。そこに辿り着くまでに、SEが必要でした。でなければ、敏感すぎてボディワークは受けられなかったでしょう。

ボディワークを勉強しはじめると、自分の身体も変わってきます。学ぶということは受ける機会も多くなりますし、繊細な領域のワークでは、受け手だけでなく施術者も変化します。『場』の影響力でしょうか。


その学びの変遷は、

まずはロルフィングのイールドワーク。呼吸が全身に染み渡り、細胞レベルでの振動、あらゆる関節の位置関係が均質化した肉体のなかで再調整されていきます。  あるワークショップでのこと、交換セッションで受け手側に回っているとき、『心臓がゆれる』という経験をしました。横向きによこたわり、骨盤に触れられている時に、胸郭の中、心臓が一瞬わっーっと激しく震えたのです。術者の方に後で聞くと、見た目も身体が震えていたとのことです。このことは、変化の大きなきっかけとなったようで、一段階身体が変わった、という経験になりました。

 ※身体が震える、という現象はロルフィングのセッション中にときどき見られる現象です。触れられているところとは全然別のところで起きることが多いです。

そして、私のロルフィングのセッションが大きく変わったのもこの頃です。それまでは、受け手の方に服を脱いでいただき、強い圧力で皮膚を滑らせるようにストロークする、という手技を用いていましたが、このとき以降、イールドワークの手技でもある、服を着たまま、軽く触れるだけで身体の内側からの変化を促す、というスタイルに変わって行きました。


軽く触れるだけなのに、不思議です。


近年では。さらに深い領域を扱うバイオダイナミクスの学びを深め、そちらをセッションに取り入れています。 ※こちらも服を着たまま軽く触れるだけです。

(話が長くなってきたので、そろそろこのへんで。。)

このように、外界に出られるまではSEにより助けられ、その後はイールドワークやバイオダイナミクス、ロルフィングを学ぶうちに体は変化をつづけてきました。それにより、自分自身が回復していくこと、生きていくこと、それがわたしが辿ってきた学びのプロセスです。

その中心にあったのは、やはり、ロルフィングでした。

 


トラウマ解放のサイン

 

ツーっと涙が流れる、深呼吸、血行による顔のほんのりした赤み、筋肉のピクピクした痙攣のような動き、などなど。

 

※ここは大事なポイントですが、ツーっと涙を流すのは、激しく大泣きするのとは真逆の現象です。  ある種の解放ワークをうたった自己啓発系のワークでは、激しく泣いたり暴れるに近い動きをしたりして解放させるというやり方をするようです(かつて、わたしもやったことがあります。。)が、これは神経系の観点からみると、ロルフィングとは真逆で、よけい体の調整能力を損ねます。まるで、解放されたかのような脱力感と疲れを感じるでしょう。しかし、これは統合して良い方向に向かいません。こういったワークが繰り返されると、むしろのちのち調子を崩していきます。 

 

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(そして、激しい解放ワークには、キリがありません。なんども何度も通うけれど、しばらくしたらまた必要になってくる。。)

わたしはソマティックエクスペリエンスを勉強したことがあります。そこで知り合った心理士さんからもそういう解放ワークで調子を損ねるかたが多いという話はよく聞きます。

本当の解放の際にはほーっと休まる方向に向かいます。そして、さらにロルフィングではその後の統合に向けて体に必要なサポートをしています。たとえば、身体が安定していくような足からのサポート、骨盤の安定、胸郭の広がりによる呼吸の広がり、などなど。その後の統合を身体から支える、解放を受け取るための器(安定した身体)を用意しています。身体と心はつながっている、ロルフィングは統合を目的としています。それが真の解放につながるでしょう。

本当に大切な事は、安定した身体と神経系、解放の後の『統合』なのです。

 


ロルフィングの優位性

 

ロルフィングが特化しているのは、解放と同時に身体の『構造』が変わっていくということです。

 

大地からのサポートの充実は安心感を生み出します。胸郭の柔軟性による自由な呼吸は落ち着きを生み出します。構造が安定していくと心も落ち着く、、統合のための大きな器ができていくのです。

 

※ロルフィングはトラウマを扱うことは目的としていません。身体の構造の安定化、重力と身体との調和を目指しています。

 

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さまざまな手法による身体からのトラウマの解放の後に起こること、そこが大切です。解放の後に神経系が再び乱れたり、より悪いパターンに移行するのではなく、安定して外界からの刺激にも柔軟なパターンを作れるか、そこが焦点です。解放だけ見ているようでは不十分、もしくは危険かもしれません。身体のシステムが再構築され、統合される。そこが大切です。

 


参考資料

 

  • 神経系の活性化、脱活性化について

http://ameblo.jp/rolfing-taro/entry-12158173088.html

 

  • 電子書籍

『とても簡単!自律神経セルフメンテナンス:神経のしなやかなはたらきを取り戻す』(浅井 咲子・田島 功 著)
http://ratik.org/4678/907438135/
日常で役立つエクササイズです。神経系の自己調整の能力を取り戻していくというもの。そして、神経系の仕組みについて、簡単にわかりやすく解説しています。

 


トレーニング歴

  • 2015年8月 ソマティック・エクスペリエンス(SE)トレーニング1・2(札幌)
  • 2016年3月 ソマティック・エクスペリエンス(SE)トレーニング2・3(札幌)