トラウマワークに興味のある方へ

トラウマワークに興味を持ちロルフィングに辿り着いた方へ、簡潔な説明を。


トラウマ、というと”心の傷”とか、それが邪魔して自由に行動できない制限をかける心のブロック、みたいなイメージ持っている方が多いと思うし、私もそう思っていたし。

 

ロルフィングを知って興味を持ったキッカケも”トラウマは筋膜に溜まる”からロルフィングがいい。というのがあったからです。実際、トラウマ解放を望んでロルフィングに興味を持つ方もいらっしゃいます。

 

”トラウマ”ってなんでしょう?

 

いろんな側面から捉えることができると思います。体の全体としてみると、フルイドという液的な体に溜まっている衝撃のエネルギー、という見方もできます。バイオエナジェティックのアプローチです。しかし、ここではもっと理論的、科学的に見ていこうと思います。『神経系』という側面から。ソマティックエクスペリエンスというトラウマワークがあります。

 

**

 

・ソマティックエクスペリエンス(略してSE)の世界

 

”トラウマとは神経系を巡る未解放のエネルギーである”

 

”トラウマとは出来事にはない”

 

トラウマとは、思考や感情、、想いや出来事にはないのです。神経系を巡る未解放の高活性化状態のエネルギー、、。後ほど説明します。

 

ソマティックエクスペリエンスは、創始者が元ロルファー(ロルフィングの施術者)であり、ロルフィングの業界では有名です。ポリヴェーガル理論というのがベースになっています。

 

**

 

・ポリヴェーガル理論

 

ポリヴェーガルとは多重迷走神経のことです。(なんじゃそりゃ?)これがトラウマ化する時のキーになります。

 

神経系と言えば、交感神経と副交感神経がありますね。(運動したりして神経系を活性化させる『交感神経』と、リラックスしたりさせる副交感神経の二つ。。)でも、副交感神経は実はさらに2つに分類されます。『腹側迷走神経』と『背側迷走神経』のふたつ。(進化の過程によりできた時期が異なり、背側迷走神経は爬虫類の時代、腹側迷走神経は哺乳類の時代にできたものです。腹側迷走神経は哺乳類にしかない。)

 

。。

 

「交感神経」、『腹側迷走神経』と『背側迷走神経』の3つがトラウマ化のキーとなる舞台となります。さて、ポリヴェーガル理論についてのお話を。。

 

自然界で動物が生き残る戦略は3つあります。

 

①逃げる②闘う③死んだふり

 

3つに価値の優劣はなく、選択が起こります。

・敵が来た!→逃げる。または、闘う。→成功した。→生き残ります。

・敵が来た!→逃げる。→逃げる。→逃げる。、、逃げきれない!!→死んだふり(フリーズ)します。→自然界では死んだ獲物は食べず、敵は去っていく可能性があります。→敵が去ると、、→生き返る。

 

トラウマ化する可能性があるのは、死んだふり(フリーズ)の戦略の時です。

 

。。

 

さらっとそれぞれの戦略の、神経系の活性化状態を見てみましょう。

 

・敵が来た!→逃げる。または、闘う。→成功した。

 

はじめ神経系は安心安全の低活性化状態→敵が来た!逃げる:交感神経が活性化しエネルギーが高まっていく。→逃げ切った:活性化したエネルギーが自然と解放され脱活性化されていく→平常な安定した低活性化状態に戻る。トラウマ化しません。

 

。。

 

・敵が来た!→逃げる。→逃げる。→逃げる。、、逃げきれない!!→シャットダウン→死んだふり(フリーズ)します。→敵が去ると、、→生き返る。

 

はじめ神経系は安心安全の低活性化状態→敵が来た!逃げる:交感神経が活性化しエネルギーが高まっていく。→逃げる、逃げる、逃げる:どんどん活性化状態は高まり、やがてある閾値にまで達する。限界。→シャットダウンが起こる。死んだふり(フリーズ):異常な活性化状態。固まってるので静かに見えるけど、猛烈なエネルギーが巡っている。

 

→敵が去ると、、生き返る:仮死状態のフリーズから徐々に帰ってくる時、動物はブルブル震えたり、涙を流したり、手足をばたつかせたり、荒い息をしたり、、で、その体に溜まった異常な高エネルギーを解放していきます。やがて解放を終え通常状態の安定したエネルギー状態にまで遷移すると、生き返り、何事もなかったように人生をつづけます。このとき、トラウマ化は起こりません。

 

。。

 

・トラウマ化するとき

 

死んだふり(フリーズ)から生き返る時、脱活性化して神経系を巡る高エネルギーの解放をし損ねた時、トラウマ化されます。

 

 

野生動物は死んだふり(フリーズ)から生き返る時、脱活性化して神経系を巡る高エネルギーの解放をします。しかし、解放し損ねた時、神経系に閉じ込められトラウマ化されます。

  

異常に活性化したエネルギーが解放されず、神経系に閉じ込められたら?そのエネルギー状態のままで日常を生きなければならない。想像してみたら、それは大変でしょう。

  

野生動物は(コメント欄の動画のように)脱活性化のプロセスを完了させますので、トラウマ化されませんが、人間は?大脳が発達していますので、この場ではふさわしくない、とか、恥ずかしいから、とか、で脱活性化の機会を失い高エネルギーの解放をし損ねることが多々あります。手術の麻酔なんかもそうですし、ただ木から落ちた、ということでもトラウマ化の可能性あります。

  

トラウマのない人などいません。が、その程度が全然人によって違います。神経系が常に高活性化状態だと?イライラしてたり気持ちが塞いだり、、。と関連してそうです。気持ちや思考にも連動していそうですね。しかし、本当にヤバいほどの活性化状態の人は、動けません。ずーっと1日固まって座っている、ただ寝ている。という感じで部屋から出ることもできないでしょう。

  

・シャットダウン(死んだふり)の仕組み

  

「交感神経」の活性化がどんどん高まる→限界値を超える時→「背足迷走神経」で無理やり抑え込みフリーズする。

  

つまり、高エネルギー状態の「交感神経」+高エネルギー状態の「背足迷走神経」=もう無茶苦茶高いエネルギー状態。アクセル全開でブレーキ全開、という状態です。振り切れて乖離状態になります。

  

・トラウマの解放、SEの手法

  

体のトラウマを解放する時、一気にやると逆効果、危険です。神経系の活性化状態を徐々に減らしていきたいのに、一気にやると活性化状態は追加され、トラウマは追加されていきます。

  

60年代70年代に特に流行ったトラウマセラピー、大声出したり、枕などを殴り続けたり、、はその場ではいい感じしますが、更なるトラウマ化をやってます。あるいは、感情や記憶を探ったりのぞいたり分析しようとする時、、さらに神経系に負荷をかけ圧倒していきます。これも再トラウマ化です。

  

脱活性化、トラウマの解放は少しずつ少しずつ、ほんの1滴ずつ。しかできない。少しであるほど早いとされます。

  

そうやって、ある程度の器、刺激に対する耐性ができてきてはじめて、出来事を見ることができます。それまでは、出来事を見つめることは活性化を高め圧倒されてしまうので、見てはならない。

  

・解放それ自体が目的ではない

  

トラウマ解放を望む人は、それがなくなったら自由になれるし、スッキリするだろう、と思うしそうしたいと思うでしょう。しかし解放には注意が必要で、ほんの1滴ずつしかできない。

  

そして、その目的は解放して重荷を離すことではなく、それはプロセスであり、準備であり、シフトへの道であり、目指すのは”健康で柔軟な神経系”です。

  

トラウマを抱えた高活性化状態の神経系のシステムで生きていくのは大変です。ちょっとした物音や刺激で、神経系は一気に活性化してしまう。高活性化状態はなかなか自然に脱活性化せず、危機モードから抜けられない。それでは、社会生活をするのは大変です。

  

目指しているのは、柔軟な神経系。それは、ちょっとした物音→急激な活性化で危機モードにシフトするのではなく、ちょっと活性化した神経系は、安全を確認すると自然と脱活性化して通常モード、安心安全な領域に自然と帰ってくる。安定した適応力のある神経系。目指しているのは解放ではなく統合。

  

**

  

・体に残ったトラウマは、感情や思考のアプローチでは届かない。

  

脳幹(身体感覚を司る爬虫類の時代にできた脳の下位の部位)にアクセスするためには、大脳(感情や思考)からのアプローチでは届かない。会話の内容や想いでは届かない、だから、SEでは神経系を観察し、神経系にアクセスするために身体感覚を用います。

  

SEは心理の業界では安心安全で早い、ということで流行っているようです。(14年前にはセラピストが日本に二人しかいなかったですが、現在では数百人いらっしゃるんじゃないでしょうか?)

  

**

  

以上は、だいぶ端折った私の記憶、、詳しくはセラピストさんに聞いたり調べたりしてみてください。トレーニングに参加したのももう10年以上前ですし、わたしは体の全体からのアプローチであるバイオダイナミクスやバイオエナジェティックにシフトしたので、SEのトレーニングは途中で辞めてます。

  

SEの理論が全てではなく、神経系に限定された世界観でしかありませんが、参考にはなるかと思います。

  

(※わたし施術は精神疾患のある方は対象にしていません。心理の専門家を受診してください。もし施術を受けられる場合は程度が軽いことと、医師の許可がある場合です。)

 

 

**

 

 

youtubeにしろくまが麻酔によりフリーズし、目覚める時に神経系に閉じ込められたエネルギーを解放している様子を映した動画があります。12:00くらいから映ってます。

 

『Nature's Lessons in Healing Trauma: An Introduction to Somatic Experiencing® (SE™)』